あなたは、麦わら帽子を持っていますか?
麦わら帽子は、春日部市の特産品です。それは何故?いつからでしょうか?
地元のこと、意外と知らないものです。
まずは麦わら帽子について、知りましょう。
#麦わら帽子
春日部市は、古利根川流域に位置していて、土地が肥沃で、昔から米や麦の生産地でした。
明治初期頃、農家の人が、農閑期の副業として、麦の茎の部分を利用し、麦わら帽子の素材である「麦わら真田」を作り、海外に輸出していました。
明治10年頃、この「麦わら真田」を使って、春日部市でも帽子作りをするようになりました。明治25年頃には、ドイツから帽子用のミシンを輸入し、生産能力が向上、量産できるようになりました。
主に農作業用として生産されていた麦わら帽子ですが、高度経済成長期の影響で、専業農家が減ったことや、レジャーや娯楽が増えたこともあり、日常でも麦わら帽子をかぶるようになりました。
現在、春日部市内で麦わら帽子を製作している所は数カ所。
#田中帽子店
日本国内でも、麦わら帽子を量産、販売している「工場」は、岡山県笠岡市の石田製帽と埼玉県春日部市の田中帽子店の2カ所です。
明治13年創業、今年140周年になる田中帽子店さんに、麦わら帽子のできるまで。教えてもらいました。
①縫製
一本の「麦わら真田」から、帽体(かぶる部分)を作ります。同じように麦が色づく広大な麦畑も少なくなり、田中帽子店では、輸入した「麦わら真田」を使って、手作業で麦わら帽子を作っています。
ミシンを使い、職人の感覚で、木型に合わせて立体に縫っていきます。
この部分を作れるようになるには、2~3年。ツバを含めて全部を縫えるようになるには、5年はかかるといわれています。
動画は、職人になって8年目の職人さん。渦(うず)と呼ばれる麦わら帽子の中心から縫う、代表的な製法です。時々木型を確認しながらミシンの針を進め、確認の為に木型に合わせると、ピッタリです。
②寒干し/かんぼし
乾いた、湿気のない冷たい風の吹く季節に、外で麦わら帽子を干します。
干すことで、編み目が引き締まり、型崩れしにくい丈夫な帽子ができるのだそうです。
つまり、夏の風物詩「麦わら帽子」の「寒干し」は、春日部市の冬の風物詩です。
③型入れ/プレス
プレス機を使って、蒸気と高圧力で麦わら帽子の形を整えます。
しかし、この時、縫製の時に使った木型と同じ金型がないと、この機械は使えません。
長年の仕事の中で、木型のみしかないものも。その時は、アイロンを使って型入れを行います。
ツバが特殊なデザインの帽子もアイロンを使います。
機械でも、アイロンでも、型入れは、帽子に命を吹き込む大切な作業です。
④内縫い
帽子の内側の、汗止め(スベリ)、サイズ調整用のテープなどを、ミシンで縫い付けていきます。
⑤型入れ/仕上げ
ここで、もう一回型入れ。帽子に最後の息を吹き込みます。
動画は、田中帽子店六代目の、アイロンでの型入れ作業です。
⑥飾り付け
リボンなどをつけて、麦わら帽子に可愛くお化粧をします。
⑦ひげ切り/検品
縫製の際にめくれた皮や、飛び出た麦を丁寧に取り除きます。
手触り、かぶり心地、ひとつひとつ確認をして、お客様の元に届けます。
⑧完成
手づくり、とはいっても、ここまで、人の手と工程、熟練の技が必要とは、想像もつきませんでした。
歴史と作り方を知ると、ただの特産品としてではなく、愛着を持って、麦わら帽子をかぶりたくなります。
では、次に、作っている人を見ていきましょう。